押さえておきたい! パナマハットの由来・歴史・発祥
2022/04/13
- 帽子コラム
夏の帽子の王様といえば、軽い、涼しい、柔らかい、と三拍子そろったパナマハット(パナマ帽/Panama hat)。でも、その主な生産国がパナマではないってご存じでしたか?
そこで今回は、ちょっと勘違いされがちなパナマハット(パナマ帽)の由来・歴史・発祥について、改めてまとめてみました。
パナマハット発祥の地は、パナマではなくエクアドル
パナマハット(パナマ帽)と聞くと、パナマ運河で有名な国・中米のパナマが思い浮かぶと思います。「パナマハット」という呼称が定着した由来には、確かにパナマ運河が深く関わっているのですが、この帽子の発祥国はパナマではなく、南米の国エクアドルになります。
パナマハット(パナマ帽)の歴史は数世紀前まで遡り、現在のエクアドル地域の人々が赤道付近の強い太陽光から頭部を守るためかぶっていた、トキヤ草の帽子がその起源とされています。職人が昔ながらの技術で手作りするもので、海岸沿いの区域が発祥といわれています。
ちなみに「パナマハット」は英語でもそのまま「Panama hat」と表記されますが、英語ではなくスペイン語が公用語である現地エクアドルでは「トキージャハット」と呼ばれています。この「トキージャ」が、「トキヤ草」の「トキヤ」に当たります。
16世紀に入ると、スペイン人が現在のエクアドル地域に上陸し、周辺を植民地化します。ヨーロッパ人には未経験の赤道付近の厳しい環境下にあって、現地の天然素材を用いた快適なトキヤ草(パナマ草)の帽子は重宝され、普及していきました。多くの入植者たちがトキヤ草(パナマ草)の帽子を求めるようになります。
やがてスペインによる支配のもと、現地の伝統的な帽子と先進のスペイン文化が融合し、現在のような形のパナマハット(パナマ帽)へと進化していきます。
「パナマハット」という呼称の由来としては、パナマで多く売買されていた、パナマ運河の建設に携わった人々がかぶっていた、など諸説ありますが、19世紀にアメリカのセオドア・ルーズベルト大統領がパナマ運河訪問時にこの帽子を着用していたことで世界的に浸透した、という説もよく知られています。
2012年、エクアドル産の伝統的なパナマハット(パナマ帽)は、「エクアドルのトキヤ帽子の伝統的編み込み製作方法」として、ユネスコの無形文化遺産に登録されました。これにより、パナマハット(パナマ帽)が、良質な天然繊維と伝統技法によって生み出される最高品質の帽子であるということが、改めて国際的に認められることとなりました。
パナマハットの素材「トキヤ草」とはどんな植物?
パナマハット(パナマ帽)は、ヤシ科のトキヤ草(パナマ草)の葉を細く裂いた紐状の繊維を編んで作られます。トキヤ草(パナマ草)を素材とする伝統的なハットは「本パナマ」と呼ばれ、他の植物繊維や化学繊維を素材とする帽子とは明確に区別されています。
トキヤ草(パナマ草)は、南米エクアドル発祥の植物であり、扇形に開いたユニークな葉をもっています。表側はグリーン、内側はアイボリーです。標高の高い山の農場で大切に栽培され、葉の柔らかい内側部分のみが帽子素材として使われます。
赤道直下の強い陽射しがその柔軟性を奪ってしまうため、トキヤ草(パナマ草)は朝のうちに収穫されます。その葉は、切り取られ、分けられ、洗浄され、ゆでられます。そして最後に十分に乾燥させます。機械等は一切使わず、自然の力のみで乾燥します。
非常に手間と時間のかかる工程を経て、トキヤ草(パナマ草)の葉から繊維が抽出され、さらにその中から選別された最高の繊維がパナマハット(パナマ帽)の素材として用いられます。
こうした素材から編み上げられていくパナマハット(パナマ帽)の形状としては、定番の中折れタイプが主流ですが、それ以外にも、ウェスタン、ポークパイ、オプティモ、ボーラー、ボーター(カンカン帽)など様々な形状のものがあります。
珍しいところでは、まるでカゴかザルのような見た目の、ハンチングタイプもあります。