ラシャとフェルトの特徴の違いは? ラシャ生地の帽子ってどんなもの?
2024/01/08
- 帽子コラム
フェルトとよく似た質感をもつ「ラシャ」と呼ばれる生地をご存じですか?
近年は、衣料としての需要は減少傾向にあるともいわれるラシャ生地ですが、乗馬ズボンや帽子の分野では引き続き素材に採用されています。
そこで今回は、ラシャがどんな生地か、歴史や起源・由来、特徴についてまとめてみました。
ラシャの起源と特徴 日本には16世紀の南蛮貿易で渡来
ラシャとは、ウール(羊毛)などの素材を使った厚手の毛織物の一種です。平織り、綾織り、繻子織り(朱子織り)などで織った毛織物を十分に縮絨(しゅくじゅう)させたのち、毛羽の先端を起毛させ、密で丈夫に仕上げたものを指します。
繊維を織った上で起毛させる仕上げのため、表地からは生地の織り目が見えないことが特徴になります。
ラシャは、ポルトガル語で毛織物を意味するraxa(ラーシャ)が語源とされ、日本ではこの外来語の音に漢字をあてて「羅紗(らしゃ)」と表記される場合もあります。
その発祥・起源は12世紀頃のヨーロッパにあるとされ、日本には16世紀の室町時代末期に南蛮貿易によって渡来しました。戦国時代には武将の陣羽織、江戸時代には火事装束、明治時代以降は軍服、羽織、外套(コート、マント)などに用いられました。
イメージしやすいところでは、ビリヤード台や麻雀卓に張られた緑色の布(シート)が、代表的なラシャ生地になります。
似た質感で、帽子素材でもおなじみのフェルトとの違いは?
よく似た手ざわり、肌ざわりである素材「フェルト」とラシャの違いは、どんなところにあるのでしょうか?
フェルトとは、動物の毛を圧縮してシート状に加工(縮絨加工)したもののことを指します。
哺乳類の毛の表面は、ウロコ状のキューティクルで覆われています。これに熱、圧力、振動等を加えると、キューティクル同士が噛み合って離れなくなる、という特性があります。
こうした性質を活かし、動物の毛を広げて圧力をかけて、揉む、巻いて転がす、などすることによってフェルトが作られます。繊維を織る、編むなどの工程がないことから、フェルトは「不織布」とも表現されます。
上の項目で紹介した通り、ラシャは生地を織った上で起毛させているので「織物」ということになります。
つまり結論としては、ラシャとフェルトには織っているか織っていないかという違いがあり、ラシャは織っている「織物」で、フェルトは織っていない「不織布」ということになります。
フェルトハットの商品一覧はこちらラシャ生地の帽子にはどんなものがある? 帽子種類は?
さて、そんなラシャ生地が用いられる帽子としては、どんなものがあるでしょうか?
まずはフェルトに似た質感を存分に活かしたボーラーハット。織り目のないすっきりとしたラシャの生地感が、丸くキュートなシルエットが特長のボーラーハットにマッチしています。
また、同じくラシャ生地の織り目のないシンプルな風合いを活かしたベレー帽や、すっぽり頭を包み込むバケットハットもあります。
ラシャ生地には、近代以降は軍服にも用いられたという歴史的な背景があり、その流れをくむ警察官・消防士・パイロットなどの制帽、学生帽、バイカーズキャップのようなワークキャップ・マリンキャップタイプの帽子にもよく使われています。