帽子(ハット)にまつわる用語 「ホンブルグ帽」と「中折れ帽」の違いとは?
2025/01/31
- 帽子コラム
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あなたは、クラシックなメンズハット(男性用帽子)の一つである、「ホンブルグ帽(ホンブルグハット)」と呼ばれる帽子をご存じでしょうか?
実は歴史と伝統のあるフォーマル系の帽子なのですが、日常的なおしゃれアイテムとしてなじみのある「中折れ帽」と比較して、近年では少々レアな存在になっているかもしれません。
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そこで今回は、「ホンブルグ帽(ホンブルグハット)」と「中折れ帽」にどんな違いがあるのか、それぞれの定義・歴史・由来・起源などを確認しつつ、考えてみたいと思います。
ホンブルグ帽とは? → まっすぐのくぼみとオールアップブリムが特徴
ホンブルグ帽(ホンブルグハット)とは、以下のような特徴がある帽子です。
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頭頂部(クラウン)の中央に縦にくぼみ(クリース)が入り、つば(ブリム)が鋭角にオールアップ状に巻き上がった(せり返った)フォルムで、またそのつば(ブリム)のエッジ部分に別布を当てて縫い込むパイピング加工が施されていること。
トップハット(シルクハット)に次いでドレッシーとされている、主にフェルトが素材に用いられるフォーマル系の帽子です。
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歴史的な面でいえば、このホンブルグ帽(ホンブルグハット)が有名になるのに一役買ったのが、イギリスのエドワード7世でした。19世紀末、皇太子時代のエドワード7世がドイツ西部の街・ホンブルグを訪ねた際、当地で流行っていたこの帽子に出会い、彼が英国に持ち帰ったことをきっかけにして、多くの人々に愛用されるようになったと言われています。
以来ヨーロッパ・アメリカを中心に第二次世界大戦頃まで流行し、上流階級から一般のビジネスマンに至るまで広く支持されました。ノーベル文学賞作家でもあるイギリスの首相ウィンストン・チャーチルもホンブルグ帽(ホンブルグハット)の愛用者の一人で、実際に着用している写真が数多く残されています。
中折れ帽とは? → 頭頂部が「くぼんだ」「へこんだ」ハット
中折れ帽の「中折れ」とは、帽子の頭頂部(クラウン)の中央部分が縦に「折り込まれている」状態のことです。「折り込まれている」という表現はイメージしづらいかもしれませんが、「くぼんでいる」「へこんでいる」と捉えると分かりやすいでしょう。
そんな中折れ帽と対照的な帽子としては、トップハット(シルクハット)、ボーラーハット(ダービーハット/山高帽)、ボーターハット(カンカン帽)などがあります。
これらの帽子の頭頂部(クラウン)は、平らであったり丸みがあったりします。こうした帽子の形と比較すると、中折れ帽の特徴がイメージしやすくなるでしょう。
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また、「中央部分を縦に」という定義に厳密に従うならば、センタークリース型のみが中折れ帽に該当するかもしれませんが、後方が少し幅広のティアドロップ型や、くぼみの底部に軽い「戻り」があるクラシック型も、中折れ帽の仲間になります。
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なお、中折れ帽の頭頂部がへこんでいる理由には諸説あります。
その一説は、19世紀にイタリア国内で起きた暴動の際、山高帽(ボーラーハット)をかぶっていたある政治家が、一人の暴徒にステッキで頭を殴られたことに由来する、というもの。
この時、この政治家の帽子の頭頂部にはへこみができてしまいましたが、彼はこのへこみを「名誉の負傷」と捉えて、以降もへこんだままの状態でかぶりつづけます。それにインスピレーションを受けた帽子メーカーによってデザインされるようになったのが、中折れ帽だと言われています。
【まとめ】「ホンブルグ帽」と「中折れ帽」の違いは?
さて最後に、両者の違いについてまとめます。
上で紹介したように、「中折れ帽」は、頭頂部(クラウン)にくぼみ・へこみがある帽子全般を指します。
その意味では、ホンブルグ帽(ホンブルグハット)も中折れ帽の一種とも言えそうですが、明確に異なるポイントが1点だけあります。
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それは、つまみ(フロントピンチ)と呼ばれるものです。これは頭頂部(クラウン)にくぼみをつけた帽子の前側を、手の指を親指と他4本で分けた形に開いて、つまんで鋭角に尖らせたようなくぼみがあること。
一般的な中折れ帽にはこのつまみ(フロントピンチ)がありますが、一般的なホンブルグ帽(ホンブルグハット)にはありません。この点が、両者の違いと言えるでしょう。