「雨の日に気をつけたい、革小物や靴の注意点!」
ライター:クシシュトフ・イヌスキー 監修:松はじめ
2024.06.15
雨で大事なスーツが濡れてしまったとき、誰もが急いでタオルで拭くかと思います。でも、ちょっと待って。レザーシューズやレザーバッグは大丈夫ですか。雨に濡れてしまったスーツがパッカリング(波打ち)してしまうように、革小物や革靴にも問題が起きてしまう可能性大なんです。
そこで今回は、雨の日に革製品に気をつけるべき理由やレザーシューズとレザーバッグの注意点、雨に強い革素材などをご紹介します。お気に入りのレザーアイテムを長く大事に使いたいという方は、ぜひチェックしてみてくださいね。
雨の日に革製品に注意しなくてはいけない理由
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革製品に使われる革は、牛・馬・羊・豚などの皮を加工したものです。これらの皮自体は水分に極端に弱いわけではなく、汚れを落とす、あるいはなめしに使われたタンニンを洗い流すといった革への加工工程では、実際たくさんの水が使われています。
では、革製品が雨などに注意するように言われるのはなぜなのでしょうか。主な理由は下記のとおり。
- 水分を多分に吸収してしまうと革がふやけ、水ぶくれや波打ちといった型崩れを起こしてしまうから。
- 吸収した水分が乾く際に油分も失われ、放っておくと革がパサパサになり、硬化やひび割れを起こしてしまうから。
- 吸収した水分が革繊維の中のワックスや汚れを不均一にすることで、濡れた箇所が乾くとシミのようになってしまうから。
- 速やかに乾燥させないとカビの発生する恐れがあるから。
水に濡れると即座にダメになるというわけではなく、濡れたまま放置するのが問題だとおわかりいただけるかと思います。とはいえ、長くきれいに使いたい、メンテナンスを少なく済ませたいという点では、できるだけ雨を避けることが大切です。
雨の日に革靴を履く際の注意点
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雨だからレザーバッグを持たないという選択はできても、レザーシューズを履かずに過ごすのは大人の男にとってはなかなかに難しいこと。特にビジネスマンの方ならばなおさらですよね。
となれば、革靴には防水スプレーをかけておくのが吉。しっかりと水滴がはじかれれば、シューズのシミや型崩れを防ぐことができます。
防水スプレーの使い方は次のとおりです。
- シューズの汚れを靴ブラシと乾いた布で丁寧に落とす。
- 防水スプレーを20cm以上離れた距離から、シューズ全体に満遍なくスプレーする。
- 30分ほど乾燥させる。
- 水滴を数滴たらし、きちんとはじくことを確認する。
使い方はメーカーにより異なる場合がありますので、その際は各使用手順にしたがってください。
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もちろん防水スプレーをしていても万全ではありません。革靴が濡れた場合は、タオルなどで早めに拭くようにしてください。自宅に戻ってからは靴の中に新聞紙などを丸めて入れ、しっかりと水分や湿気を取り除きます。また、つま先かヒールを浮かせた状態でソールを乾燥させることもお忘れなく。
雨に強い革素材の特徴
わずらわしい防水スプレーを使わずに雨から革製品を守りたい。そんな方には防水加工されたレザーを選ぶという手もあります。
主な素材は、皮に防水フィルムを貼ったもの、耐水性の高いコーティングを施したもの、染色やなめしの際に皮に防水性の成分を染み込ませたものです。挙げた順に水に強く、その分しなやかさや独特の光沢感といった革本来の風合いが失われる傾向にあります。雨に濡れやすい靴は防水コーティングされたレザー。革の質感を大事にしたい財布は防水成分を染み込ませたレザーなど、小物の特徴も踏まえながら自分に合ったものを選んでみてください。
ちなみにクロムなめしされたレザーも比較的耐水性が高いので、選択肢に加えてみてもよいでしょう。
雨の日に革製バッグを使う際の注意点&適したバッグの選び方
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バッグの場合、天気予報を確認して「今日は雨が降りそうだから、革製でないものを持とう」という選択もしやすいはず。とはいえ、晴れの予報でも急な雨に見舞われることがありますので、まずはレザーバッグの雨対策を確認しておきましょう。
基本的な考え方は革靴の場合と同じです。
- 事前に革製バッグに防水スプレーをかけておく。
- 濡れたならば、すぐにタオルなどで水分を拭きとる。
- 自宅に戻ったら、バッグの中に新聞紙などを詰め、風通しのよい場所でしっかりと乾かす。
またバッグの中身を濡らさないように、防水・はっ水性のあるバッグインバッグを普段から用いるのもひとつの手です。
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雨のたびにバッグを持ち替えるのが大変、メンテナンスをするのが面倒という方は、防水レザーや合成皮革を使ったバッグを選んでみるのもよいでしょう。
合成皮革のおすすめは、PU素材と呼ばれる帆布などにポリウレタンコーティングを施したものです。比較的本物のレザーの質感に近く、大人がビジネスシーンで使用しても違和感はありません。ただし経年劣化で加水分解を起こし、コーティングがはがれてしまう点には注意も必要です。
革製品が濡れたら:すぐにできる対処法
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革靴とバッグの項でも少し触れましたが、革製品が濡れたときの対処法は大事なポイントですので、もう一度おさらいをしておきます。
- できるだけ早く、革についた水分を乾いたきれいなタオルなどで拭き取る。その際はこすらず、ポンポンと軽くたたき取るように。
- 帰宅後、濡れた革製品の形を整えつつ、中に乾燥した新聞紙などを丸めて詰め込む。
- 日陰かつ風通しのよいところに濡れた革製品を置き、しっかりと乾燥させる。このとき、ドライヤーなどで急激に乾燥させると縮みやシミがでるので要注意。
- 完全に乾いたら、オイルやクリームで必要な油分と水分を補う。余裕があれば防水スプレーをかけておくとなおよし。
革が濡れたと気づいたら、少しでも早く対処すること! これで被害が最小となり、その後のメンテナンスもグッと楽になります。
なお、オイルやクリームの使い方は以下のとおりです。
- ブラシで汚れをしっかりと落とす。
- きれいな布にオイルやクリームをつけ、革製品全体に薄くムラなく伸ばす。
- 時間を置いてなじませる。
- から拭きをして、余分なオイルやクリームを拭き取る。
湿気対策の重要性
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タンパク質と油分の塊であるレザーは、カビにとって栄養の多い絶好の環境です。カビが生えやすい高湿度下、つまり革製品が濡れた状態が続くと、いとも簡単に汚染されてしまいます。「拭き取ればきれいになるのでは?」と侮るなかれ。カビはレザー繊維の中に深く根を張るので、根絶するのは至難の業。発生させないことが1番です。
とにもかくにも、革製品を濡らさないように。もし濡れたならば、しっかりと乾かすようにしましょう。
また革製品は保管場所にも気をつけたいところ。カビのエサとなる汚れをブラシなどで落とし、ホコリ避けとなる保管袋をかぶせてから、直射日光の当たらない風通しのよいところにしまいましょう。クローゼットの通気性が気になる場合は、時々ドアを開けて換気してください。必要に応じて除湿剤を使うのもおすすめです。
まとめ
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お気に入りの革製品は、いつまでも大事に使いたいもの。雨に降られて波打ちやひび割れ、シミができないよう、濡れたならばしっかりと対処しておきたいところです。またあらかじめ防水スプレーで対策をするもよし、水に強い防水レザー製品などを選ぶもよし。ぜひ万全の方法で革製品を楽しんでみてくださいね。
Writer執筆者紹介
松 はじめ
東京・表参道のオーダーサロン「ボットーネ」オーナー。
20代で起業し、政治家、経営者、芸能人、プロスポーツ選手など自身も3,000人以上の仕立服を手がける。
映像制作、企画を行う株式会社メディコ代表。
YouTubeチャンネル「メンズファッションTV」をはじめ、オンラインスクール運営やブログなどで情報発信を行う。
著書に、リセット仕事服(技術評論社)