大人のこなれ感を引き立てる、ワイドパンツのスタイリングアイデア
ライター:クシシュトフ・イヌスキー 監修:松はじめ
毎日のコーディネートをマンネリ化させないようにするのは何かと大変です。アウターの種類を変えたり、インナーに差し色を加えたり、みなさんは普段どんなテクニックを使っていらっしゃいますか。
今回は、わりと見落とされがちなボトムスのアイテムがテーマです。いつもの服に投入するだけでも見違えたスタイリングになる「ワイドパンツのコーディネートアイデア」を5つご紹介します。
トレンドのワイドパンツの魅力
ワイドパンツとは、一般的なボトムスよりも幅が広く取られているもののこと。丈はロングで、太もも位置から裾まで一定の太さでストンと落ちるように仕上げられたデザインが基本です。なかには極端に幅が広いもの、裾にテーパーがかかったものなども存在し、それぞれバギーパンツ、テーパードワイドパンツと呼ばれています。
トレンドに上がりだしたのは、90年代リバイバルが流行り始めた2015〜2016年頃から。新鮮なフォルムや体型をカバーできるメリットも相まって、今ではストリートカジュアルからスーツスタイルにまで幅広く採用されています。
ワイドパンツのモノトーンコーディネート
ファッションの最先端はまだまだリラックスシルエット全盛。そこでモードを代表するモノトーンにワイドパンツを組み合わせて、トレンドを意識したコーディネートを楽しんでみるのはいかがでしょう。
スナップは粋なホワイトカラーをメインに据えた、ワイドパンツスタイルの例。リネンライクな素材感やアンコンジャケットも相まって、ARMANI(アルマーニ)を彷彿とさせるモダンでエレガントな着こなしに仕上がっています。
秋冬に挑戦するならば、素材をあたたかなウールに変えて、セットアップとインナーのカラーを逆転させればOKです。
合わせたい帽子:ベースボールキャップ
モードファッションにも、カジュアルなベースボールキャップを合わせるのが昨今の流儀。大人っぽさやスタイリッシュさが魅力のモノトーンスタイルであっても、かぶることでワイドパンツの持つリラックス感やこなれ感との調和が取れ、よりまとまったコーディネートに昇華できます。
デザインは、ブラックカラーかつブランドロゴがない(目立たない)もののほうが今っぽくておすすめです。
ワイドパンツのリラックス感のあるコーディネート
リラックス感が魅力のワイドパンツには、同じく自然体で過ごせるアイテムを重ねるという方法もあります。
スナップで右の男性が合わせているのは、アメジカジのリバイバルにより人気を集めるCPOジャケットです。ゆったりしたシルエットに加え、コットン・コーデュロイといった素朴な素材感がワイドパンツと好相性。どちらも70年代に流行ったことから、タックインさせるとどこかクラシカルな雰囲気が漂うのもおもしろいところです。
大人が取り入れる場合は、レザーシューズやハイネックニットでドレッシーさをプラスすると馴染みやすくなります。
合わせたい帽子:フィッシャーマンズキャップ
ここでCPOジャケットと相性のよいワークキャップを選ぶのもよいのですが、今回はロールキャップをプッシュ。もとはフランスの漁師がかぶっていたとされ、フィッシャーマンズキャップとも呼ばれるカジュアルな帽子です。
使用感はビーニーに似ているものの、より個性的な存在感を持っています。レザー素材を使った一点は大人のコーディネートにもぴったりです。
ワイドパンツをオフィススタイルに取り入れる
インパクトのあるワイドパンツゆえに、オフィスコーディネートに取り入れるのは少々抵抗があるという方もいらっしゃるかもしれません。とはいえ、レディースではオンシーンにも違和感なく使われているアイテムですので、オフィスカジュアルがOKの会社であれば、ぜひ挑戦してほしいところです。
ワイドパンツはハリや光沢感のある上品な素材のもの、トップスはシャツを基本として、ややゆったりとしつつもきちんと見えするものを選ぶと扱いやすくなります。最後はビジネス感を演出するために、足元やベルトをレザーで引き締めて。
秋冬はこの上にテーラードジャケットやクラシカルなコートを重ねるのがおすすめです。
合わせたい帽子:バケットハット
オフィスの中で帽子をかぶる機会は少ないですが、おしゃれをしたい日や寒さをしのぎたい日などは通勤時だって使いたくなりますよね。
おすすめするのは、ベースボールキャップのような感覚で扱いやすいバケットハット。今日ではセットアップの外しとしてもよく使われるアイテムなので、オンスタイルでも違和感なく取り入れられます。まずは、どんなスタイリングにも合わせやすいダークカラーを中心に選んでみてください。
トレンド感漂う、ワイドパンツを使ったストリートスタイル
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スケートやヒップホップなどを吸収するストリートスタイルもワイドパンツとベストマッチ。なかでも動きやすくてリラックス感があり、これまでの価値観にアンチテーゼを掲げられるワイドシルエットのジャージは、昨今のトレンドスタイルに欠かせないアイテムです。
スナップは、バスケットジャージ風のワイドパンツにTシャツ、スニーカーを合わせたコーディネート。これだけで様になるのは、やはりストリートスタイルの魅力ですね。アウターに同素材のトラックトップを合わせたり、寒い季節にはダウンジャケットを羽織ったりすれば、気分はもうLAやNYといったところ!
合わせたい帽子:ニットキャップ
上半身はTシャツなのに頭部にはニット帽。一見チグハグなこのスタイルが許されるのも、さすがは自由なストリート文化といったところでしょうか。
そんなスタイルを楽しむためにも、もちろんおすすめするのはニットキャップ。最近はシンプルなデザインにも注目が集まるこの界隈。大人が選ぶなら、がぜんそんな一点に注目したいですね。
ワイドパンツ×小物で個性を際立たせるポイント
ワイドパンツブームの再燃にもなった90年代の再評価。その流れで言えば、先にも触れたスケートやヒップホップに関するアイテム、例えばゴールド系のアクセサリーやGショックのような時計を合わせるのもよいでしょう。
一方で、全ての大人がストリートやカジュアルに寄せるのは難しいところ。そこで参考になるのが、アレッサンドロ・ミケーレが率いていたころのGUCCI(グッチ)のワイドパンツスタイルです。クラシックで遊び心のあるデザインは2023年の今でも魅力的。早速レトロなサングラスやスカーフをプラスして、モダンなコーディネートとのベストなバランスを探りながら楽しんでみてください。
まとめ
ゆったりとした雰囲気を持つワイドパンツの人気は、過去のスキニーパンツへの反動、いわゆる「ファッショントレンドは繰り返す」という範疇で語られがちです。その一方でファッションジャーナリストの中には、全世界的な閉塞感の反動と見る向きもあります。
何かとせわしなく、あらゆるものに縛られがちな現代。ワイドパンツを軸とした気負わないコーディネートを楽しむ男性は、きっとすてきな存在に映るはず。早速明日からワードローブに取り入れてみてはいかがでしょうか。
Writer執筆者紹介
松 はじめ
東京・表参道のオーダーサロン「ボットーネ」オーナー。
20代で起業し、政治家、経営者、芸能人、プロスポーツ選手など自身も3,000人以上の仕立服を手がける。
映像制作、企画を行う株式会社メディコ代表。
YouTubeチャンネル「メンズファッションTV」をはじめ、オンラインスクール運営やブログなどで情報発信を行う。
著書に、リセット仕事服(技術評論社)