帽子の種類と名前を徹底解説!形状や素材など特長まとめ
「街で見かけた気になるあの帽子・・・」「あこがれの有名人がかぶっていたあの帽子・・・」 カッコいいなと思っても、帽子の名前が分からなくて・・・そんなお悩みを感じていませんか? イメージしている帽子、どんな種類か言えますか? 店員さんに説明できますか?
ご安心ください。そんな皆さんのため、こちらのページに、ぜひ知っておきたい帽子の種類(名前と特長)をまとめました。
帽子は長い歴史の中で複雑に発展してきたため、種類を示す用語には定義が難しく、同じ言葉が異なる複数の帽子を指したり、様々な意味あいで使われるケースもよく見られます。
今回、特に混乱しやすい「別名・別称」についても可能な限りまとめました。こちらのページを帽子選びの際の辞書代わりに使っていただけたら嬉しいです。それではさっそく始めましょう。
サマースタイルの帽子の種類
パナマハット
別名:パナマ帽、トキージャハット
パナマハットは、トキヤ草(パナマ草)の葉を細く裂いた紐を編んで作られる夏用の帽子種類です。
中でも、素材に天然トキヤ草を用いた伝統的なパナマハットは「本パナマ」と呼ばれ、他の素材を編んで作られたハットとは区別されています。パナマハットの特徴は、丈夫で軽いこと。その軽快な被り心地から、夏のファッションに欠かせないアイテムとなっています。
パナマという地名が付くパナマハットですが、その起源は南米の国エクアドルにあります。現在一般に定着している「パナマハット」という呼称は、20世紀に入りアメリカのセオドア・ルーズベルト大統領がパナマ運河訪問時にこの帽子を着用したことで、世界的に浸透したものになります。
2012年、エクアドル産の伝統的なパナマハットは、ユネスコにより無形文化遺産に登録されました。これによって、パナマハットが、良質な天然繊維と伝統技法によって生み出される最高品質の帽子であるということが国際的に認められることとなりました。
形状は、中折れ帽タイプが中心で、ポークパイタイプ、サファリタイプなども人気。珍しいところではハンチングタイプなどもあります。カラーは、ホワイトとナチュラルが基本。近年では、それ以外のカラーバリエーションも豊富になっています。
ストローハット
別名:麦わら帽子、麦稈帽子、ブレードハット
ストローハット(麦わら帽子)は、その名の通り、元々は麦わらを素材とする帽子を指す呼称でした。
しかし現在においては、麦わら以外の天然繊維や化学繊維を素材とするものであっても、形状や質感を麦わら帽子のスタイルに寄せて作られた帽子種類全般を指して、ストローハットという名称が用いられるようになっています。
その意味では、トキヤ草を原料とするパナマハットも広義にはストローハットの一種といえますが、パナマハットは一つの独立したジャンルを形成しているため、トキヤ草以外の素材を編み込んで作られた春夏の帽子をストローハットとして捉えると分かりやすいでしょう。
伝統的なストローハットは、原料である麦わらを平たくつぶして真田紐のように編んだもの(麦稈真田/ばっかんさなだ)を、さらに渦巻き状に縫い合わせるという手法で作られていました。このようなストローハットには、ブレードハットという別名もあります。
手頃な価格で夏を楽しむアイテムから、染色性に優れたペーパーストローで他にはないカラフルさを実現したアイテム、高級な天然素材の採用で「本パナマ」にも負けない美しさを演出したアイテムまで、バリエーションは実に多彩です。
カンカン帽
別名:キャノチェ、ボーターハット
カンカン帽は、ストローハットの一種で、頭頂部(クラウン)のトップとつば(ブリム)がともに平らになった形状が特徴の帽子種類です。
カンカン帽という呼称は、この帽子が明治以降に日本に入ってきてから、大正~昭和初期にかけて大流行する中で定着したもの。叩くとカンカンと音がするほど硬く作られていたことが、その由来と言われています。
つまり、カンカン帽は日本固有の俗称です。英語ではボーター、フランス語ではキャノチェと呼ばれ、ともに「ボートを漕ぐ人」という意味になります。日本の帽子店においても、ボーターハット、キャノチェとして扱われている場合があります。
元々は水夫や水兵たちのための帽子であり、水に濡れても形を崩さないように、麦わらを平たくつぶして真田紐のように編んだ麦稈真田(ばっかんさなだ)などの素材をプレスで固く成型し、ニスや糊などで塗り固めることで、頑丈に仕上げられているのが特長です。
カンカン帽は、元々男性用の帽子ですが、近年は若い女性たちの間で人気となっています。従来の麦わら素材の他、トップが平らになったフォルムのみを踏襲し、トキヤ草素材を採用した、カンカン帽風のパナマハットなどもあります。
オフィス&タウンスタイルの帽子の種類
中折れ帽
別名:中折れハット、ソフトハット、ソフト帽、ボルサリーノ、マニッシュハット
中折れ帽は、頭頂部(クラウントップ)の中央部分に縦に折り込まれたくぼみ(クリース)をもつハット型の帽子のことを指します。
くぼみ(クリース)の先端に「つまみ」(フロントピンチ)と呼ばれる尖部があることも特徴になります。
つば(ブリム)の長さは6~7cmが標準的なサイズで、特に、つば(ブリム)が標準サイズから長めのものを「フェドラ」、短めのものを「トリルビー」と分類する場合もあります。
くぼみ(クリース)の形状により、まっすぐ直線的なセンタークリース型、涙の雫ような形をしたティアドロップ型、菱形に近いダイヤモンド型などの種類があります。
ウール、ラビット、ビーバーなどの毛を用いたフェルト素材の帽子種類を指すのが一般的ですが、パナマハット、ストローハットの分野でもこの形状の帽子が主流になっています。
中折れ帽が「ソフトハット」という別称をもつのは、トップハット、ボーラーハットといったフォーマルスタイルのハード帽に対して、柔らかいフェルト生地を用いて作られたという歴史から。ブランドによっては、カチカチに固い仕上げの中折れ帽もあります。
布帛ハット
別名:ミルキーハット、ソフトハット
布帛(ふはく)ハットは、中折れ帽の一種で、フェルト、トキヤ草、麦わらなどとは異なり、布帛=「布の織物」で作られた帽子の種類全般を指します。
代表的な素材は、コットン(綿)、リネン(麻)といった天然繊維、ウール、ナイロン、ポリエステルといった化学繊維など。
別名のうち、ミルキーハットという呼称は、特にコットン製のアイテムのみを指す場合があります。また、布帛製のハット全般を指してソフトハットと呼ぶ場合もあります。
布帛ハットは、フェルト生地の中折れ帽と比較して、普段使いのオシャレにも気軽に取り入れやすい、カジュアルな雰囲気のアイテムが多いのが特長です。
つば(ブリム)を、前方が下がり後方が上がった「スナップブリム」のスタイルに仕上げたアイテムが主流で、価格もリーズナブルであるため幅広い世代に愛されています。
ポークパイハット
別名:テレスコープハット、テラピンチハット
ポークパイハットは、短めで上向きのつば(ブリム)と、頭頂部(クラウントップ)が長円形にへこんだ独特のフォルムが特徴の帽子です。
帽子の頭頂部(クラウントップ)が縁の部分を残してぐるりと一周くぼんでいる独特のシルエットが、イギリスの伝統料理であるポークパイ(肉入りパイ)に似ていることから「ポークパイハット」という名前が付いたと言われています。
元々は19世紀の半ば頃からイギリスで被られはじめた帽子の種類で、1930年代、60年代に大ブームとなり、イギリス紳士たちの必須アイテムとなりました。
素材は、フェルト、トキヤ草・麦わらなどのストロー、布帛(ふはく)など、多岐にわたります。別名のテラピンチハットは、特に布帛製のアイテムを指す場合が多いようです。
少しレトロな印象のあるシルエットで、ジャケットスタイルとの相性がいい帽子です。軽快かつ可愛らしい雰囲気もあるので、現代の日本においては男女を問わず人気があります。
タウン&カジュアルスタイルの帽子の種類
ハンチング
別名:鳥打帽(とりうちぼう)、ハンチングキャップ、フラットキャップ、ハンチングベレー
ハンチングは、19世紀半ばにイギリスの上流階級の間で狩猟用に使われたものを起源にもつ帽子種類です。
当時、富裕層の間で一般的だった帽子トップハット(シルクハット)は、乗馬や狩猟などの激しい運動には向いていなかったため、アクティブな活動の中でもズレにくい帽子として、ハンチングが生み出されました。
やがて庶民の間にも広まり、好んで着用されたことから、ハンチングは庶民のシンボルとなりました。現在では実用的な意味あいは薄れ、手軽なファッションアイテムとして人気を集めています。
モナコハンチング(アイビーハンチング)は、多くの人がハンチングと聞いて思い浮かべる、最もスタンダードなタイプです。天井部分を一枚布で構成したものがクラシックな正統派と言えますが、縦長パネルを4枚、6枚と縫い合わせたモダンなアイテムもあります。
プロムナードハンチングは、つば(ブリム)と頭頂部(クラウン)がほぼ一体となり、縫い目も極力少なく、丸いフォルムを強調して仕立てられたハンチングです。横向き、あるいは後ろ向きにかぶるとベレー帽のようなシルエットになるのが特長です。
この他、一般的なハンチングと比較して、つば(ブリム)を長めに余したものを、ダックビル・ハンチングと呼ぶ場合があります。
キャスケット
別名:カスケット、ニュースボーイキャップ、レーニン帽、ベーカーボーイキャップ、ギャツビー、エンジェルハット
キャスケットは、広義ではハンチングの一種ですが、日本においては一般に別の種類として扱われることも多い帽子です。
頭頂部(クラウン)トップの天ボタン(くるみボタン)を中心に、複数枚の布を縫い合わせたふっくらとしたボリュームのあるフォルムが特徴。6枚はぎあるいは8枚はぎものが主流になっています。他に2枚はぎ、4枚はぎのものもあります。
キャスケットは、フランス語で「かぶと・ヘルメット」を意味する「カスク」が語源で、前方にのみつば(ブリム)がある帽子を指す言葉。その意味では、後述のマリンキャップ、ベースボールキャップも、広くキャスケットの一種と言えます。
キャスケットは、19世紀から20世紀初頭にかけて欧米の若者や労働者の間で流行したことから、外国映画の中でもよく目にする帽子種類です。丸みを帯びたレトロな雰囲気が特長で、身に着ける人に若々しい印象を与えてくれるため、男女を問わず人気があります。
ちなみに別名のニュースボーイキャップは、アメリカで新聞売りがかぶっていたことから定着した呼称です。
ベイカーボーイハットとキャスケットの違いについて
ベイカーボーイハット(べーカーボーイキャップ)は、パン職人の少年がかぶっていたことに由来する帽子名称で、キャスケットの別名といえます。
まずは天ボタンが付いていて、クラウンが多枚はぎになったキャスケットやハンチングが、元来の意味でのベイカーボーイハット(べーカーボーイキャップ)といえるでしょう。その点においては、キャスケットとの違いはありません。
ただ近年のファッション業界では、レディースを中心にベイカーボーイハット(べーカーボーイキャップ)はもう少し広い意味で使われています。
特にクラウン部分のふくらみが大きいタイプのキャスケットを指したり、下で紹介するマリンキャップ(マリンキャスケット)、ワークキャップなどを広く含める場合があります。
マリンキャップ
別名:フィッシャーマンキャップ、バイカーズキャップ、マリンキャスケット
マリンキャップは、元々はヨーロッパの漁師や船の乗組員、水兵たちがかぶっていた帽子の種類です。
形状の特徴は、やや長めのつば(バイザー)とふっくら感のある頭頂部(クラウン)の間に、「腰」と呼ばれる段があること。この部分には、レザー調のベルトや紐リボンなどの装飾が施される場合もあります。
こうした外観は、警察官の帽子や学生帽の形状にも似ています。男性が着用すれば力強い雰囲気に、女性が着用すればマニッシュでセクシーな雰囲気に仕上がります。
主な素材は、ウール、コーデュロイ、コットンなど。
1953年公開の映画『乱暴者(あばれもの)』(原題:The Wild One)で主演のマーロン・ブランドが着用して人気を博したバイカーズキャップは、元々はグリークフィッシャーマンと呼ばれるギリシャの船乗りのマリンキャップが原型とされています。
ベースボールキャップ
別名:野球帽、アポロキャップ
ベースボールキャップは、その名の通り、野球の試合の際に選手や監督・コーチがかぶる、つば(バイザー)の付いた帽子のこと。
19世紀のアメリカで確立したとされるベースボール(野球)は、諸説あるものの、イギリスのタウンボールやクリケットに起源をもつとする説が有力になっています。
クリケットの帽子はキャスケット型から進化したものであるため、ベースボールキャップの究極のルーツもキャスケットにあると考えられます。
現代のベースボールキャップは、野球チームのロゴはもちろん、野球以外のスポーツチームのロゴ、人気ファッションブランドのロゴが刺繍やワッペンで施されたもの、逆にロゴなどはなく高級な質感を活かしたものなど、様々なデザインとバリエーションが揃っています。
またベースボールキャップには、サイズ調整のためのアジャスター、面ファスナー、ベルトが備えられているものと、備えられていないものが存在しています。
日本人の男性にとっては、子供の頃から親しんでいる形状であり、最も手軽に取り入れられる帽子種類と言えそうです。
ベレー帽
別名:チャペル
ベレー帽は、柔らかく、丸くて平らなフォルムで、つば(ブリム)のないことが特徴の帽子種類です。
その起源は、一般に、スペイン・フランス国境のバスク地方にあると言われています。種類は大きく分けて二つ、バスクベレーとアーミーベレーがあります。
多くの方がベレー帽と聞いてまず思い浮かべるのが、バスクベレー。頭頂部(クラウン)のトップに「チョボ」と呼ばれる短いひも状の飾りが付けられているのが特長です。
ピカソ、ロダンといった画家・芸術家、日本では手塚治虫、藤子・F・不二雄など漫画家が愛用したことから、知的でアーティスティックなイメージがあるのが、こちらのタイプです。
それに対して、アーミーベレー(モンティベレー)は、頭頂部(クラウン)の「チョボ」がなく、被り口の部分がレザー調の素材などで縁どり(トリミング)されているのが特長です。
ミリタリーベレーという別名からも分かる通り、こちらは主に軍隊で用いられていたタイプのベレー帽。第二次世界大戦頃から各国の軍隊に採用されはじめ、現在においても制帽として定着しています。
ベレー帽とよく似た帽子として、タモシャンターがあります。こちらはスコットランドの民族衣装に起源をもち、頭頂部(クラウン)のトップに毛糸のポンポン飾りが付けられていることが大きな特長になります。
ワークキャップ
別名:レールキャップ、レイルロードキャップ、ドゴールキャップ、ドゴールワークキャップ、エンジニアキャップ、エンジニアワークキャップ
ワークキャップは、つば(バイザー)があり、クラウン(頭頂部)が円筒形に近く、トップが平たく(平天に)なったカジュアル系のキャップです。
20世紀初頭のアメリカの鉄道作業員の帽子にルーツをもち、その後も郵便局員、技術者など様々な職種の人々の作業帽として改良・進化してきました。こうしたルーツから、「働く人の帽子」「働く時の帽子」という意味で、ワークキャップと呼ばれています。
現在では、カフェ、ファストフード、ベーカリーなど、飲食店の店員の制服としてもおなじみです。また様々な素材やデザイン、カラーが採用され、メンズ・レディースを問わずカジュアルファッションの定番アイテムの一つになっています。
歴史的には、労働者の帽子として、頭部の保護、繰り返し洗える丈夫さが重視され、製作されていました。そうした特徴を残すアイテムは、今でも数多く存在します。
素材はコットンが中心で、薄手の春夏物から、少し厚手のデニム地、丈夫なキャンバス地まで。また秋冬物としては、ウールなどの素材も用いられます。
元々が労働者の帽子ということで男性らしいガッツリした体型に似合うのはもちろん、小顔効果を期待できることから女性にも人気があります。
広い意味でのワークキャップの中にも、細かな形状の違いにより、レイルロードキャップ、ドゴールキャップ、エンジニアキャップなどの別名で呼ばれるものがあります。
チロリアンハット
別名:チロルハット、チロル帽、バヴァリアンハット、アルペンハット
チロリアンハットは、中折れ帽の一種で、オーストリアのチロル地方の民族衣装として長く伝統的にかぶられていた帽子を起源とするハット型の帽子の種類です。
形状としては、つば(ブリム)が短く、前方はやや下がり後方は折れ上がっていて、ハットリボンの代わりに、飾り用の紐や羽飾りが付いていることが大きな特徴になります。
発祥地・チロル地方は、雄大なアルプス山脈の山間に位置します。そのためチロリアンハットは、現在も登山用のアイテムとして愛されています。また、若々しく優しい雰囲気を演出できることから、男女を問わずタウンユースのオシャレアイテムとしても人気があります。
本格的なチロリアンハットは、主にウール、ラビットなどのフェルト素材で作られています。
別名の一つである「アルペンハット」として一般に認知されている帽子は、布帛素材が主流で、装飾も紐リボンではない場合が多いようです。フォルムのみチロリアンハットのスタイルを踏襲したアイテムと言えるでしょう。
フォーマルスタイルの帽子の種類
トップハット
別名:シルクハット、ビーバーハット、ストーブパイプハット
トップハットは、頭頂部(クラウン)に高さがあり、そのトップが平らになった円筒状のフォルムが特徴の帽子種類です。
燕尾服、モーニングコートを着る際に合わせる男性の正礼装用の帽子で、基本的にはフォーマルなシーンで多く用いられます。
トップハットには、元々素材にビーバーの毛皮を用いたため「ビーバーハット」、その代替素材としてシルク(絹)が用いられるようになったことから「シルクハット」という別名があります。明治時代以降の日本においては、後者の「シルクハット」という呼称が浸透し、フェルト素材が主流となった現在においても定着しています。
また、頭頂部(クラウン)を折りたためるようにして、観劇や保管に適すようにアレンジされた、「オペラハット」と呼ばれる派生アイテムも存在しています。
フォーマルな印象の強いトップハットですが、マジックショーにおいてマジシャンが被るイメージがあるように、パフォーマーのステージ衣装として用いられたり、一般のパーティー用の服装に合わされたりと、現在ではカジュアル寄りの用途でも広く着用されています。
より安価な素材を採用したものや、鮮やかなカラーリングのものなど、遊び心のあるデザインのトップハットも登場し、カジュアルなシーンにまで、その裾野が広がってきています。
ホンブルグハット
別名:ソフトホンブルグ、ソフトハット
ホンブルグハットは、トップハット(シルクハット)に次いでドレッシーとされ、男性用の正礼装に用いることができる帽子種類です。
特徴は、頭頂部(クラウン)の中央に縦に入ったくぼみ(クリース)と、鋭角にせり返った(巻き上がった)ブリムが見せる優雅なシルエット。また、ブリムのエッジ部分に、別布をあてて縫い込むパイピング加工が施されている点も大きな魅力になります。
このホンブルグハットを一躍有名にしたのがイギリスのエドワード7世でした。 皇太子時代のエドワード7世が、保養のために訪れたドイツ西部の温泉地・ホンブルグで流行っていたこの帽子を自国に持ち帰り、それをきっかけにして上流階級の人々の間で流行するようになったと言われています。
以後欧米を中心に第二次世界大戦頃まで流行し、一般のビジネスマンに至るまで広く愛用されました。ノーベル文学賞作家としても知られるイギリスの首相ウィンストン・チャーチルもホンブルグハットの愛用者の一人で、実際に着用している写真が残されています。
ブリムエッジの動的なフォルムやパイピング加工の優美さから、近年では従来型のフェルト素材のアイテム以外にも、パナマハット、ストローハットなど春夏用の帽子の分野にも、このホンブルグハットのテイストを受け継いだアイテムが登場するようになっています。
ボーラーハット
別名:ダービーハット、山高帽、山高帽子、メロン、コークハット
ボーラーハットは、丸い半球型の頭頂部(クラウン)と巻き上がったつば(ブリム)が特徴の帽子種類です。
19世紀半ばのイギリスで、馬に乗る際、木の枝などから頭を守る帽子として着想されたアイデアを基に、ウィリアム・ボーラーという帽子製造業者が完成させたのものがボーラーハットのルーツとされています。
元々は乗馬用の帽子として広まったボーラーハットですが、上流階級がかぶるトップハット(シルクハット)と、労働者階級がかぶる中折れ帽(ソフトハット)の中間的な帽子として、19世紀末にタウンユースのアイテムとしても人気を博しました。
その後、「山高帽」のシンボルとも言えるチャップリン映画の登場人物や、多くの著名人たちから愛用されたこともあり、ボーラーハットは世界中に普及しました。
伝統のボーラーハットは堅く加工したフェルト素材で、カラーはブラックが基本。しかし現代に至っては、グレー、ネイビーなどの黒以外のカラーバリエーションも存在しています。
また、独特の丸みを帯びたユーモラスなフォルムから女性の支持も高いため、現在ではよりカジュアルな素材、明るめのカラー、かわいらしい装飾を施したボーラーハットなども多く市場に登場するようになりました。
個性派スタイルの帽子の種類
バケットハット
別名:サファリハット
バケットハットは、横から見ると台形のようなシルエットをしていて、円筒形のクラウンに比較的広い下向きのツバをもつ帽子です。
バケット(bucket)とは、いわゆる「バケツ」のこと。その名の通りバケツを逆さまにしたようなフォルムが特徴で、シンプルかつ気軽に取り入れやすく、老若男女を問わないアイテムになっています。
素材はコットンが中心で、薄手の春夏物から、少し厚手のデニム地、丈夫なキャンバス地まで。また秋冬物としては、ウールなどの素材も用いられます。
元々は男性もの(メンズ)のイメージが強い帽子でしたが、ストリートカジュアルやスポーティなスタイルにもよく取り上げられるようになり、近年ではレディースファッションの外しアイテムとしても人気が出ました。
目深にすっぽりかぶることで小顔効果が期待できることも、女性に人気の高い要因の一つと考えられます。
ほとんどのバケットハットが、ソフトな仕上げで折り畳めるクラッシャブル仕様(フォルダブル仕様)。そのため、おでかけの際にも使い勝手がよく、持ち歩くのに大変便利です。
バケットハットとサファリハットはとてもよく似ています。特にクラウントップが平らな平天のものは、両者にほとんど違いはないと言えるでしょう。
飛行帽
別名:フライトキャップ、パイロットキャップ、ボンバーハット、ケーバ帽子、シコロ付きキャップ、トラッパー、トルーパー、ウシャンカ、ロシア帽
飛行帽は、本来は航空機に搭乗する際に身に着ける帽子で、現在ではその高い防寒性から一般ユーザー向けの冬場のファッションアイテムとしても人気の帽子種類です。
特徴は、頭をすっぽりと包み込む頭頂部(クラウン)と、左右両サイドに耳あて(イヤーフラップ)を備えた独自のフォルム。一般に、この耳あてにはバックルか紐が付いていて、これを顎下で留めたり、逆に頭上で留めて耳あてをはねあげた状態で着用することができます。
帽子内側にファー(毛)をあしらい、防寒性をさらに高めたアイテムもあります。ファー付きの耳あては、はねあげた状態でかぶると独特の可愛らしい印象になるため、女性にも人気があります。
本革・リアルファーにこだわり本物の飛行帽のデザインを再現した本格派アイテムを頂点に、化学繊維・フェイクファーを用いてカジュアルな雰囲気に仕上げたお手頃アイテムまで、バリエーションも実に多彩です。
ルーツは若干異なりますが、耳あて付きの帽子としては、ケーバ帽子、シコロ付きキャップも、広義に飛行帽に類するアイテムと考えられます。
ウエスタンハット
別名:カウボーイハット、テンガロンハット
ウエスタンハット(カウボーイハット)は、カウボーイなどが被る帽子の種類で、高めの頭頂部(クラウン)と長めのつば(ブリム)をもつことが特徴になります。
ウエスタンハット(カウボーイハット)はこうした帽子の総称で、その一種にはテンガロンハットがあります。
ちなみにテンガロンハットの名称の由来には、「10ガロンの水が入るから」との説がありますが、10ガロンは約38リットルにもなるため、あくまでも比喩的な呼称と考えられます。
ウエスタンハット・カウボーイハット・テンガロンハットなどと呼ばれる帽子には、つば(ブリム)の反り返りがないもの、あるいは小さいもの、つば(ブリム)の裏側が見えるほど左右が大きく反り返ったものなど、様々なスタイルのものが存在します。
ウエスタンハット(カウボーイハット)の魅力は、やはり、まるで西部劇に登場するハットを思わせるような野性味あふれるシルエット。頭上にのせれば、男性はワイルドに、女性はセクシーに決まります。
ウールを用いたフェルトハット、ストローハット、パナマハットなど、様々な素材を採用したウエスタンハット(カウボーイハット)が展開されています。
ディアストーカー
別名:鹿撃ち帽、鹿射ち帽、鹿追帽、シャーロックハット、探偵帽子
ディアストーカー(鹿撃ち帽)は、元々はイギリスで狩猟の際に被られていた帽子の種類です。
「ディアストーカー」とは、銃をもった貴族や紳士に従って鹿狩りに参加し、鹿を追い込む役目を果たす勢子(せこ)のこと。その際、彼らが被っていたものがこのタイプの帽子です。
ディアストーカー(鹿撃ち帽)は、前後につば(ブリム)が付き、左右に耳あて(イヤーフラップ)が備えられた独特の個性的なフォルムが特徴です。左右の耳あては、通常の着用時には、リボンによって頭頂部(クラウン)の上に留められています。
この帽子を見て多くの方が連想するのが、名探偵シャーロック・ホームズではないでしょうか。実は原作者アーサー・コナン・ドイルの文中には、ホームズがディアストーカー(鹿撃ち帽)を被っている場面は明記されていません。
「ホームズ=ディアストーカー」というホームズ像は、あるシリーズ作品においてシドニー・エドワード・パジェットが描いた挿絵のイメージが一般に定着したものと言われています。
サファリハット
別名:アドベンチャーハット、サファリキャップ
サファリハットあるいはアドベンチャーハットと呼ばれる帽子種類には、明確な定義はなく、大まかに「アウトドアに好適な帽子」といったくらいの幅広い意味になります。
素材に速乾性の高いリネン(麻)を採用したり、通気性のよいメッシュ加工を施したり、オイルを塗り込むことで撥水性を高めたりと、季節特有の条件の下でも快適にかぶれる仕様に仕立てられているのが特徴です。
デザイン上の特徴としては、主に屋外(アウトドア)で用いるため、しっかりと陽射しを防ぐことができる比較的長めのつば(ブリム)や、頭頂部(クラウン)のサイドに見た目にもアクティブな印象のある「ハトメ」と呼ばれる穴を備えたアイテムが多くなっています。
帽子が風に飛ばされないようにするための顎紐(あごひも)が付けられたアイテムや、ソフトな仕上げでコンパクトに折りたためるクラッシャブル仕様のアイテムもあります。
幅広くサファリハット(アドベンチャーハット)と呼べる帽子には、他にも、バケットハット、ブッシュハット、ブーニーハット、ジャングルハットなどの別名があります。
ニット帽
別名:ニットキャップ、ビーニー、ワッチキャップ、正ちゃん帽、オスロキャップ
ニット帽(ニットキャップ)は、ニット素材を編み込んで作られた帽子の総称です。ハット型でもつば(ブリム)付きでも、すべてニット帽という名称で呼ばれます。
用いられる素材は、主にウール、コットン、アクリル、ポリエステルなど。冬の帽子という印象が強いかもしれませんが、薄手に通気性よく作られているものもあり、夏にかぶれるニット帽も多く存在しています。
別名のうち、ビーニー、ワッチキャップは、ニット帽とほぼ同じような意味で、比較的シンプルなデザインのものになります。
正ちゃん帽は、頭頂部(クラウン)のトップにポンポンの付いたニット帽のこと。
オスロキャップは、つば(ブリム)が付いていることが個性的なニット帽です。頭頂部(クラウン)のサイド部分が折り返しになっていて、これを下げてかぶることで、防寒用の耳あてになるのが特長です。