パナマハット(パナマ帽)の編み方の種類とグレード
夏の帽子の王様として不動の人気を誇るパナマハット(パナマ帽)は、トキヤ草(パナマ草)の葉を細く裂いた紐を編んで作られます。特徴は、丈夫で軽いこと。その軽快なかぶり心地から、夏のファッションに欠かせないアイテムとなっています。
本場エクアドル伝統のパナマハットは、原料であるトキヤ草の栽培から、茹で、乾燥、編み込み、脱色染色、成型、装飾に至るまでの全ての工程が、現地の熟練職人たちの手作業によって進められます。
パナマハット(パナマ帽)の編み方には代表的な「網代編み」「石目編み」をはじめとして、様々な種類があります。また、編み目の細かさを示す「グレード」と呼ばれる分類もあります。
こうした点に着目すると、あなたの帽子選びがより楽しくなるでしょう。ぜひ、こちらのページの情報を参考にしてみてください。
パナマハットの編み方の種類
Llano(リャノ)/網代編み(あじろあみ)
ヨコ材を、2本ずつタテ材を越えさせたり、潜らせたりして編み上げる手法。目が詰まった美しい光沢と、しなやかな感触が魅力。最高級とされるパナマハット(パナマ帽)は、この網代編みで作られています。
V字が連続して見えるのが特徴です。
Brisa(ブリーサ)/石目編み(いしめあみ)
素材を1本ずつ交差させる編み方。網代編みのパナマハット(パナマ帽)と比較して、やや編み目が大きく、質感豊かな外観。目の詰まりがそれほどきつくないので、風通しがよく軽快なかぶり心地です。
1本ずつ交差して見えるのが特徴。網代編みと比べると、目が粗くざっくりとしていて、より涼しげな印象です。
Medio Punto(メディオプント)/かぎ針編み(かぎばりあみ)
太めの素材をかぎ針で編み上げる手法。夏の帽子らしい表情豊かな外観が特徴です。ざっくりとした編み目なので、カジュアルな雰囲気に仕上がります。ずっしりとした重量感があります。
Torcido (トルスィド)/より合わせ編み(よりあわせあみ)
素材をよりながら石目編みを施す手法。石目編みよりもざっくりと編み込まれ、涼しげな雰囲気に仕上がります。素材をよっているため、ハリのある手ざわりで重量感があるのが特徴です。
柄編み(がらあみ)
何色かの先染めした素材を編み込み、柄を表現する方法。チェック柄、グラデーション柄、ドット柄など個性的なパナマハット(パナマ帽)に仕上がります。
透かし編み(すかしあみ)/飾り編み(かざりあみ)
帽体に穴あき模様を施す編み方。通気性が高く、涼しげなかぶり心地になるのはもちろん、見た目にも清涼感あふれる印象に仕上がります。
Cable(カブレ)/ケーブル編み(ケーブルあみ)
縄のように編む編み方、もしくはケーブル編みを施した模様。繊維を棒針編みで目を交差させることで、縄のようなねじれた模様を作る編み方。
模様だけでなく、立体的に編むことで厚みがあり、型崩れしにくい硬めな質感になります。
パナマハットの編み目細かさ(グレード)について
パナマハットの質の高低には、統一された基準は存在しませんが、基本的には編み目の細かさ(グレード)の違いがその目安となります。
編み目が細かくなればなるほど素材も均一になり、製造にかかる日数も増えるため、仕上げられるパナマハットも高品質と見なされるというわけです。
当店・時谷堂百貨では、お客様のパナマハット選びのガイドラインとなるよう、編み目の細かさ(グレード)に応じて、下表のような独自の分類を設定しています。
編み目細かさ(グレード) | |
---|---|
スタンダード | 天然トキヤ草(パナマ草)ならではの質感を感じられる、標準的な編み目のパナマハット |
スペシャル | スタンダードより、ワンランク上の感触と上質感のある見た目を楽しめるパナマハット |
プレミアム | 本格的な逸品アイテムならではの高級感・上品さ・格調を存分に味わえるパナマハット |
スーパープレミアム | ごく限られた熟練の職人が数ヶ月かけて編み上げた、薄くて軽い、特別なパナマハット |
パナマの個性
「天然」繊維を職人が「手編み」で作るパナマハット。
パナマハットは、「トキヤ草」という天然繊維を細く裂いたものを、職人の手で編み込んで作られた、世界に同じものが一つとしてない帽子です。
天然繊維である「トキヤ草」は、繊維の太さが均一ではないため、機械を使って編むことができません。
そのため、1点1点に天然繊維と手編みならではの「個性」があり、それがパナマハットの魅力の一つとなっています。
天然繊維は、繊維の太さや厚み、そして状態が1本1本異なるため、同じようにブリーチ(漂白)や染色をしても、現在の技術ではムラなく均一な状態に仕上げることが難しいのが現状です。
「ナチュラル」は化学的な工程を一切行っていない「トキヤ草」ならではの色であり、繊維それぞれの薄い色味や濃い色味が混ざることで、天然繊維ならではのグラデーションに仕上がります。
「ホワイト」は「ナチュラル」色をブリーチ(漂白)したものになります。
編み上げる前の繊維の段階で脱色する場合もありますが、現在は帽体に編み上げた後で脱色するのが主流です。
脱色しにくい繊維はブリーチ後も色が残りますが、これもまた天然繊維ならではの味わいです。
一方、「カラーパナマ」は、染料を使用して染め上げたパナマです。
編み上げた帽体を染色する場合(単色)と、染色された繊維を編み上げる場合(2色以上の混合編み)があります。
また、近年はグラデーションや濃淡をつけた染色技術も生まれ、個性あるパナマハットが様々なシーンで活用されています。
トキヤ草は元々油分の多い植物であるため、ムラなく均一に色を入れるのが難しい素材です。
そのため、同じカラーの帽体でも、染色ロットの違いや繊維の状態によって微妙に色味が異なることがあります。
これも天然繊維ならではの風合いであり、自分だけのオリジナルパナマハットとして楽しんでいただけます。
「ホワイト」「ナチュラル」「カラー」すべてのパナマハットに共通するのが、経年変化です。
パナマハットは主に日除けとして使用されるため、太陽の日差しを受けることで帽体の色が変化していきます。
主に「ホワイト」や「ナチュラル」は色味が濃くなり、飴色のような色に変化します。
逆に、「カラー」パナマは日差しに当たることで染料の色味が抜け、淡い色味に変化します。
どちらも、被っている人の生活や環境によって変化するため、時間が経つほど愛着が湧いてきます。
デニムや革製品のように使い込むことで味が出てくる過程をお楽しみください。
かぎ針編みのパナマハットは、手編みとは異なり、繊維の間にかぎ針を通すことでざっくりとした編み目になります。
手編みのような繊細さには欠けますが、やや太めの繊維を使用することで、よりカジュアルな印象を与えます。
そのため、かぎ針編みの特徴として、編み目が不揃いだったり、ブリム端の編み終わり部分が少し段差ついていたりしますが、これは「かぎ針編み」ならではの特徴です。
繊維の太さが均一でない箇所や、編み込み過程での繊維の継ぎ目部分により、稀に編み目の乱れが生じる場合があります。
人工繊維を使用している場合は継ぎ目がないため、編み目の乱れが少なくなります。
しかし、本パナマは天然繊維を手編みで仕上げているため、編み目の乱れもまた本パナマならではの証といえます。
パナマの個性の注意事項
- パナマの個性は1点1点異なります。
- 経年変化はあくまで日常生活で使用し続けた場合に起こる変化です。
故意に日向に放置をしたり水に濡らしたりすることは繊維を痛める原因となり、帽子の寿命を縮めることになりますので、絶対におやめください。 - 予め天然繊維や手編みの特徴をご理解のうえ、ご購入をご検討ください。